「何かの間違いじゃないか」。奈良県大和郡山市矢田山町の会社員の男性(51)宅で27日、男性がおのやサバイバルナイフで殺害された事件。殺人容疑で逮捕された長男(17)を知る人は、驚きの声を上げた。おとなしいタイプで、中学3年ごろからは不登校ぎみになり、進学した通信制の高校にはほとんど通っていなかったという長男。取り調べには素直に応じているものの、犯行動機については口を閉ざしているという。父と子の間に、一体何があったのか−。事件には深い謎が横たわっている。
長男がミニバイクで郡山署に出頭してきたのは同日午前3時35分ごろ。長男の弟(15)が父親が倒れているのを見つけ、110番通報してから約5分後だった。白色のシャツに黒色のジーンズ姿で、やや呆然(ぼうぜん)とした様子だったという。
長男が話すより先に、署員が長男の名前を尋ね掛けた。長男は「何で知っているんですか」と驚いた様子だったが、やがて「父を殺した」と話したいう。
長男が通っていた中学校の教頭によると、長男は中学3年のころから不登校状態となったが、問題行動などは特になかったという。
小・中学校で同学年だった鉄筋工の男性は、長男について「おとなしい子だったけれど、友だちが悩んでいたら声を掛けたり、優しいところもあった。半年ほど前にコンビニで漫画雑誌を読んでいるのを見た後は、姿を見かけなかった」といい、事件について「ものすごく驚いた。そんなことする子では絶対にないし、何かの間違いでは…」と話した。
別の元同級生は「親の話はほとんどしなかった。聞いたのは、小学校時代に『(男性と離婚して別居した)お母さんが誕生日を祝いに来てくれる』と話したときだけだった」と振り返った。
長男は中学卒業後、進学した県立高校の通信制では登校日にもほとんど出席せず、科目登録も行っていなかった。一時、県内の製麺所で働いたが、そこも1カ月ほどで出勤しなくなったという。
外部との接触がなくなり、閉じこもりがちになっていた長男。しかし、弟は郡山署の事情聴取に「父と兄との間でトラブルはなかったし、心当たりがない」と話しているという。同署は今後、長男への取り調べを進める中で、動機の解明を進める方針だ。
27日、定例記者会見した冨岡將人・県教育長は、事件について「どうして殺人にまでいってしまうのか、怖いことだと思う。県教委としては今後も事業を通じて命の大切さやぬくもりを伝えていきたい」と話した。